The One and Only Herb McGwyer Plays Wallis Island
Cambridge Footlights出の英国エリートコメディ集団Cowards。その中のTom BasdenとTim Keyは今現在、倫敦でカフカの『審判』の現代劇を上演しちゃったりしております。(該当記事は
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審判と言えば、あのJoseph Kのどうしようもなく流れに翻弄されていく感じがTomとTimの切なげな表情と(笑)素晴らしい調和を生み出しそうで、どんな劇になっているのか非常~~に気になるのですが。今回はこの2人の数年前の短編映画、"The One and Only Herb McGwyer Plays Wallis Island"を見てみました。

(画像はすべて公式のFacebookから→
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~あらすじ~
ブリット・アウォードも取ったことがある?というフォーク・シンガーのHerb McGwyer(写真上:トム・バズデン)。Wallis島で小さなコンサートを開かないかと頼まれ、ある日小舟で島にやってきます。彼を出迎えたのは一人で島の素敵な家に住んでいるハーブの大ファン、Charles Heath(Tim Key)でした。(この出迎えるシーンでチャールズが荷物を受け取り損ねて海に落とした微妙な空気が何ともいえません(笑))お金はあるけれど島で静かに寂しく暮らしているチャールズが自分ひとりのためにハーブを呼んだと知り、「僕は一人だけの観客のためにコンサートはやらない。これは侮辱だ」と怒り出すハーブ。いくらお金を積まれたってやらないよ、といって帰ろうと決意しますが・・・。

BAFTAの短編映画の最優秀賞にまでノミネートされたこの作品、とにかく映像が美しい。部屋の中のインテリアも色々面白いものがあるので注目です。そんな中で繰り広げられるCowards的なシュールすぎる会話、トム・バズデン本人が演奏している楽曲が折り重なって20分ちょいの素晴らしい短編になっています。
主役の一人のチャールズが、いい人なんだけどちょっとしつこくて空気を読まないタイプで、ティム・キーがばっちり穏やかに好演していました。Herbを家に泊め、一人でコンサートのための大金も払うというチャールズが一体どうやってそんなに金持ちになったのか、を説明するシーンは一番面白かったかも。
「宝くじを一度当てたんだ。それで人生が完全に変わっちゃってね・・。でも全部だめにしたんだ。酒とか女とかに全部使っちゃって・・ワインとか・・ラガーとか・・でもある日、金も何も無くなってめちゃめちゃな状態で起きて、全てに疲れ切ったんだ・・」
「うん。でも・・じゃあ君がどうやって今の財産を得たのかまだ分からないんだけど・・・。」
「それで・・もう一回宝くじを買って、当てたんだ。」
何ともいえない気まずさと、チャールズが宝くじをキレイに額に飾ってたりする小ネタがすごく気に入っております。結構このシーンには時間も費やされており、チャールズのあり余るゆとりを感じさせます(笑)。
ハーブが、おそらく世界で自分の一番のファンであろうチャールズとの交流に影響を受けていく様子が優しく描かれているこの映画。そこまで感傷的になりすぎないのもクールで好ましいです。最後のシーンを見ながら"The One and Only Herb McGwyer Plays Wallis Island"というタイトルがじわじわと心にしみこんできます・・!現在ユーチューブにアップされているのでぜひぜひご覧下さいませ。
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