騒音140ホーン級に大騒ぎするほど、今回のロンドン滞在のメインコースとなってしまった「
The Lady Killers」。
しかし前回もおツタえしましたように、これはもともと、わかっちゃいるけど、観ないつもりのお芝居でした。
このWMD並みに破壊力のあるお芝居を無視して、ワテクシは一体何を観ようと思っていたのか。
こちらでございます。
Stewart Lee / Carpet Remnant World

チケット情報はこちら。
http://www.stewartlee.co.uk/gigs.htmはい、これは今年のフリンジで60分堪能したWork in Progressの完成系90分フルセットバージョン。
一度
60分バージョンを観てるのにまた観るのか、アホじゃないのか、と思うかもしれません。
でも、奥さん、あれは、work in progressなんっすよ。
オフライン編集のものも観たいけど、完パケ納品バージョンだって観たいじゃないですか。
というわけで、以下、たたみます。
スタンダップコメディ界でとんでもない付加価値がついてしまった今年のBRITISH COMEDY AWARDS受賞者が繰り広げる笑いの完全バージョンのレポートです。
正直、クソまじめにStewの笑いを分析しているので、、
芸人さんやバラエティ番組関係者の方に捧げます(爆)
「イギリスの笑いってこんなことが絶賛されているんだ」と、ぜひ、ご参考にしてください。
レスター・スクエア・シアターはレスタースクエアからチャイナタウンへ入る一本の路地沿いにあります。
Stewart Leeのコメディならではの、巧妙かつ精密に練り上げられた、完璧な”deconstruction comedy”(構造解体のコメディ)の世界小見出しがすでに矛盾しています(爆)が、ほんとにそうなのです。
たしか前にも説明したような気がするのですが、
そこかしこに転がるStewの記事から探すより、書いちゃったほうが早いので(汗)説明したいと思います。
たとえば3分でも20分でも、尺は関係なく自分の持ち時間を1セットで考えます。
一般的な構成としては、1つのテーマがあって、ネタをいくつも仕込む。
たとえば、
ネタ1→オチ1、2、3
ネタ2→オチ4、5、6
ネタ3→オチ7、8、9
とあったとします。
で、この3つのネタには共通するテーマでくくられている、というものです。
一方、Stewたちがやってるdeconstruction comedyとは、これをひっかきまわしちゃっているもの。
ネタをたくさん仕込んでおいて、あとでオチだけバンバンだしてくとか、共通するテーマを利用して、ネタ1のオチがネタ2にもつながっているとか。テーマに対してまったく触れない、とか。
先にオチの説明を細々としてしまうとか。
いつもどおりのStew 節全開でスタートし、テーマが何かおくびにも出さない前半戦。Stewart Leeとは「つねにメジャーから虐げられ、いつまでたっても少人数の固定客相手に、あーだこーだと小言と文句と悪口をいぢいぢいぢいぢ、延々とオチもなく言っている」というキャラの芸人です。
オレはホントはこんなにすごいはずなのに、ちっとも稼ぎも人気もあがらず、番組視聴者から叩かれ、ネットで叩かれ。こんなネタやれば、あんなネタできないだろうと言われ、あんなネタやれば、こんなネタやる勇気もないだろうと言われる。。。
ということをぶつくさぶつくさ。観客にからみながら、やっていきます(注1)。
今回も「キリスト教のネタはやるけどイスラム教は恐くてできないだろう」「ポテトチップスをおちょくるネタはできるだろうけど、バクラワはおちょくれないだろう」「オサマ・ビン・ラディンのネタなんか恐くてできないだろう」というところから、スタート。で、「そりゃ~、俺はどうせMichael Mcintyre でも Frankie BOyleやRickey Gervais、Russell Russell でもないからね」といぢいぢはじまるわけです。あいつら子供のネタやって、レイプと差別で落として、舞台のはしからはしまで走りまわってさ~、と。
でも自分の状況観てくれよ、と。毎日子育てに追われて、ネタ造りのために、本を読んだり、どこかへ行ったり、大人の映画や大人の番組を観たりなんて、できないんだよ。何もできないから、何もネタがない。あるとしたら、毎日毎日エンドレスに観させられている「スクービドゥ」と子供をあやすために車で走るM25(ロンドン近郊の環状線)を通してみる世界だけ。 ネタがないんだよ、とStew。
ここで、(この日はハプニングだったのか、じつはこれもネタなのか、わからないのですが)マイクが故障するという事件が発生。Stewの笑いはぼそぼそ、じめじめしゃべるのが肝心要なのに、マイクが壊れちゃったもんだから、大きな声で、あからさまにしゃべらないといけなくなっちゃった。「ただでさえネタがないのに、これじゃすべてがすべて台無し!!」
ざくっとかいつまんでですが、こんな感じで前半が終わります。こまごまと笑いどころはあるのですが、主にやっているのはネタの仕込みです。おまけに冒頭で、あまりピンと笑いを拾わないグループを見つけ、「クリスマスシーズンのオフィスパーーティの一貫で来たんだろう、おまえら」よばわりし、「何が面白いんだ?って思うと思うけど、これがあとで、オチにつながっていくから」と説明。「だから、しっかりきいとけよ」
仕込んだネタが一気にはじける後半戦
先述の「こういうネタはできないだろう」というネタの数々。ここにきて、一気に「やろうと思えば俺だってできるよ、できるにきまってんじゃん。こうやってやればみんなにウケるんだろう」とやりだします。この「こうやってやれば」というのが、前半戦でときに名指しであげられていた芸人のスタイルや、メジャー受けしている笑いの落とし込み。もちろんここで「このネタをこういうスタイルでやってみます」とは断りをいれません。でも前半のネタの仕込みがあるから、客は、テにとるように、どの笑いのスタイルや芸人をおちょくっているのか、わかるのです。誰のことも名指ししてないのに、どの芸人をおちょくっているのか、わかるのがすごいです。
そう、このショーってば、さまざまにあるコメディのスタイルをかたっぱしからおちょくっていくものだったんですね。クライマックスでは子供のネタをマ◎●●・マ●●●◎●●風に披露しはじめたと思いきや、「もうやらないよ、だってこんな笑い話、誰だってできるじゃん! そこに座ってるあんただってできる!」とマイクおいちゃって、ステージおりそうになっちゃって。
、
感想おなかよじれて涙流して笑いました。やっぱり最高だよ、Stewart Lee。後半のスタンガンのようなオチだらけのセットは、ゲイジツです。お笑いバージョンのグランジ・ロックっす。マジで、ニルバーナっす。
ええと、たしかに、60分バージョンと同じネタが登場しております。
ただ、60分バージョンのときは、これらで確かに笑えましたし、ここのネタとここがつながっている、というものがある程度見えていたのですが、全体像が見えなかったんですね。オタクとしては、これが見えないというのが、非常に「負けた」というか「わかってない」と認めなきゃいけないみたいで、不完全燃焼だった。今回フルバージョンの完成品を観て、その不明な点がはっきりわかったことが今回の最大の収穫です。
2点補足させてください。
1、これはおそらく現地イギリス人も誤解している人が多いんじゃないかと思うのですが、Stewは「Stewart Lee」というキャラクターとして他の芸人を妬み、皮肉をいい、コケ落としている。つまり、どこまで”本気”で”本心”を出しているのか、わからないのです。ただ、これがとてもビューティなのですが、Stewは自分を卑下しつづけることで、”本気”の“本心”でコケおとしていると思われても、許される空間を作っています。
2 人やモノではなく、笑いの手法やスタイルをかたっぱしからおちょくる、というこのショー。
09年にエディンバラフリンジに参加するパフォーミング・アートをかたっぱしからおちょくって大絶賛だったKevin Eldonの5つ星ショー「Kevin Eldon is titting about」と。。。似てる!(笑)
い、いや、パクリじゃないです。ネタもまったく違うし、おちょくってる対象も違う。構成も違います。(Kevinのはもっとわかりやすいですから)でも、なんか共通項というか、影響を受けているのではないだろうか、という気がしました。こちらは、あくまでワテクシの私的感想ですので。。。
そんなKevin Eldon のライブはこちらで買えちゃいます!!
http://www.gofasterstripe.com/cgi-bin/website.cgi?page=videofull&id=10233
過去のStewのライブも。これは、彼が今のstewとして名を馳せるきっかけとなった名作の一つです。
ぜひぜひご購入してみてください。
http://www.gofasterstripe.com/cgi-bin/website.cgi?page=videofull&id=6
うわ!なんじゃこりゃ! 新しいのがでるぞ!!! たしか去年(2010年)笑ったやつだ!!!
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注1:ステージ上の芸人が観客にむかって野次を飛ばします。”ここジョークなのに、わかってないやつがここの一角にいる”とかやるんです。ここ数年、毎年最低1回はStewウォッチャーをやってますが、野次飛ばしをする客を観たことがないですね。そういうむちゃくちゃ不思議な空間です。